王太子の揺るぎなき独占愛
「ご存知でしたか」
「ああ。子どものころからよくあの辺りで昼寝をしたし、王宮から逃げ出しては気分転換していたな。最近は忙しくてあまり行ってないが」
王家に子どもが生まれたとき、記念に一本の木が植樹されるのだが、レオンが誕生したときにはクスノキが植えられた。
それから二十四年がたち、見上げてもてっぺんが見えないほどの大木に育っている。
王族ゆかりの木の世話もルブラン家が行っているが、サヤはそのクスノキの世話を念入りにしてきた。
さすがにあまりにも大きくなり余分な枝の伐採などは騎士に任せているが、虫の害から守ったり、栄養が足りているか気にかけたり、週に何度か確認している。
クスノキが作る木陰で休むレオンの姿を見ることもあったが、しばらく遠くから眺めたあと邪魔をしないようにその場を去るようにしていた。
公務で疲れているレオンの邪魔をしたくなかったのだ。
「ようやくジュリアの結婚の準備も調って時間が取れても、昼寝をするには寒すぎるな」
そう言って笑うレオンにつられ、サヤも口元を緩めた。
「お昼寝は無理だと思いますが、今あの辺りは一面落ち葉に覆われていてとても美しいんです。茶色や黄色だけでなく、赤い葉がカーペットのように広がっていますよ」
「ああ、前にイザベラもそんなことを言ってたな。単なる落ち葉というよりも絵のようにキレイで目を奪われたらしい」
「イザベラが……」
ルブラン家の本家に生まれたイザベラは、優秀な女性騎士として名をはせているが、レオンとも親しく、いずれ王妃に召し上げられるのではないかと期待されていた。
サヤの表情がすっと硬いものに変わった。
イザベラの名を口にするレオンの目元はとても優しく、彼女に特別な感情を抱いているのは明らかだ。
「それほどの場所なら、今から行ってみるか? じきに雪が降って景色も変わるだろう?」
レオンはサヤの顔をのぞきこみ、誘うように目を細めた。
サヤは目の前にあるレオンの表情に頬が熱くなった。
はっきりとした目と強い意志を表す形のいい唇。
いつ見ても見とれてしまうのだ。
「でも、あの、殿下はお忙しいのでは? それにどうしてここにいらっしゃったのですか? あ、もしかして、体調が悪いのですか? 薬草が必要でしたら、お医者様に処方箋をいただいて……」