王太子の揺るぎなき独占愛
そうであれば、いいのに……。
過度の期待は絶望への近道。
サヤはその言葉を何度も心の中で繰り返し気持ちを落ち着かせようとするが、レオンに抱きしめられている中でそれは無理なのだ。
ただただ、レオンへの恋心ばかりが満ちてくる。
そしてこの状況が、サヤに勇気を与える。
それまで抱きしめられるばかりで自分からはなにもしなかったサヤの手が、レオンの背中にこわごわと回された。
ゆっくりとレオンの背中に置かれた手は、レオンの反応を探るようにじっと動かない。
少しでも動かせば、途端にレオンが離れてしまいそうで、怖い。
レオンはサヤの動きに最初こそ驚いていたが、次第に口元は緩み、首をかしげた。
サヤの出方をうかがうように何も言わず、ニヤニヤしている。
サヤはレオンの背中に手を置いただけで精一杯で、この後どうすればいいのかわからない。
そっと顔を上げれば、今にも触れ合いそうな距離に、レオンの唇があり思わず息を詰めた。
「バラの香りがする」
レオンは互いの額を合わせ、目を閉じた。
「あ、あの、バラがたくさん咲く時期に、ハーブを作って……クローゼットに入れてるんですけど、この香り、お嫌いですか?」
焦ってレオンから離れようとするサヤを、レオンは離さないとでもいうようにぎゅっと抱きしめた。
「とくに好きでも嫌いでもないが、サヤにはぴったりな香りだと思う。そのうち、俺もこの香りが似合うようになるんだろうな。なんといっても夫婦だからな……」
感慨深げにそう言って、レオンはバラの香りを楽しむように深く息を吸った。
サヤは恥ずかしさのあまりレオンの胸に顔を埋め、ぎゅっと抱きしめた。
自分にしがみつくサヤに満足そうな笑みを向けながら、レオンはあやすように体を揺らした。