王太子の揺るぎなき独占愛
「子どもたちを抱きしめるのも禁止だが、この髪を触るのも俺だけだ。いいな」
レオンの指の中からパラパラとこぼれる髪が、サヤの頬にかかる。
「高い位置で編み上げてもキレイだが、こうしておろしたままだと、いつでも触れることができていいな」
レオンの吐息を肌に感じながら、この甘い時間はいつまで続くのだろうか、できることならもう少しこのままで……と、サヤは髪に手をやり焦ったように整えた。
その後、ふたりは温室を出て森を歩いた。
冬の始まりを感じる冷たい空気が心地よく、木々の合間から注ぐ日差しに時折目を細める。
ふたりの背後からは、レオンの警護をしている騎士たちが一定の距離をとり歩いている。
今朝、結婚許可証が王家から届き、サヤはいよいよもう後戻りできなくなったと思い、王宮からの使者が屋敷を後にした途端、家を飛び出し全力疾走で森の温室に向かった。
レオンへの報われぬ恋心を秘めながら王妃としての務めを果たすことができるのか、自信が持てず、どうしようもなかった。
拒むことも逃げ出すこともできない結婚をレオン自身どう思っているのかもわからない。
結婚許可証を父親が受け取る姿を目の前にし、家にいることすらできなくなった。
けれど、サヤが逃げ込んだ温室に、突然レオンが訪れ、思いがけない時間を過ごした。
レオンの口から結婚や夫婦という言葉を聞かされ、それも決して嫌がっているようには見えなかった。
今のサヤは、それだけで十分だった。
自分との結婚を前向きに受け止めてもらえるだけで、よかった。