王太子の揺るぎなき独占愛
「ここに来るのは久しぶりだ」
「私は時々……」
サヤはこのクスノキをとても大切にしている。
数日前も幹に傷はないか、広がった枝に病気の気配はないか、確認したばかりだ。
レオンはサヤの手をそっと離すと、幹の具合を手で確認する。
「この傷。これはジュリアがつけたんだ」
「……はい。それは父から聞いています」
「だよな。母さん……妃殿下が喘息の発作で苦しむ姿を見て泣き続けるジュリアをここに連れてきたんだ。侍女たちもついてきたが、俺に抱きついて離れなくてさ。あのころはあいつもかわいかった」
レオンは懐かしそうにくくっと笑うと、木の幹に残っている傷に手で触れた。
シオンと王妃殿下の名前が彫られたその傷は、当時七歳だったジュリアが、母親の回復を願ってこっそりと残したものだ。
泣き続けていたジュリアが落ち着き、彼女を侍女に任せて昼寝するレオンに隠れて彫ったのだが、たまたまそこを通りかかったダスティンに見つかった。
クスノキはレオンにとって特別なもので、傷をつけるなんてとんでもないことだ。
それをわかっていたジュリアはダスティンに叱られると思い、再び大声で泣きだした。
その声で目を覚ましたレオンは、ジュリアから泣く理由を聞き出し、ダスティンに謝った。
たとえレオンのために植樹された木だとはいっても、管理をしているルブラン家の面々が心を込めて世話をしているおかげで大きく育っているのだ。
勝手に傷をつけていいわけがない。