王太子の揺るぎなき独占愛



「婚約記念にと思って用意したんだ。王家の森の緑をイメージして、エメラルドにしたんだが……」

 レオンはサヤの反応をうかがうように手の平を広げて見せた。

「エメラルドの宝石言葉は幸福や夫婦愛だそうだ。結婚する俺たちにはぴったりだろ? 粒の大きさやカットも俺が決めたんだ。チェーンの長さはジュリアが持っているネックレスを参考にしたんだが」
「殿下が決めたのですか……」

 サヤはエメラルドを見つめた。
 十ミリほどの卵型のエメラルドは、日差しに映えてキラキラしている。
 そして、レオンが言うとおり、王家の森を思い出す深い緑は、サヤの心を落ち着かせた。

「どうだ、気に入ったか? サヤのために用意したんだ」

 どこか自信のない口調のレオンは、そわそわしているようにも見えた。

「気に入るもなにも、宝石には縁がないのでよくわかりませんが、本当にキレイです。王家の森のように、ホッとしますし……。ですが、これは……」

 受け取るわけにはいかないとサヤが口にする前に、レオンは人差し指をサヤの唇に押し当てた。驚いたサヤは、呆然と目を見開いた。

「俺は、サヤを王妃として迎えるためになにをすればいいのかよくわからないんだ。おまけにジュリアの結婚が控えていて忙しい。陛下はすでに引退したつもりで俺に仕事の多くを譲ってしまうし」

 レオンは呆れたようにそう言うと、照れくさそうに笑った。

「忙しくて一緒にいられない埋め合わせというわけではないが、婚約の記念に受け取ってくれ」

 思いがけないプレゼントを前に、サヤはどう答えていいのかわからない。
 宝石に縁がないのはもちろん、男性からプレゼントをもらうのは初めてなのだ。
 婚約の記念だとはいっても、高価なものだとひと目でわかるようなものを受け取っていいのだろうか。
 サヤはエメラルドを見つめながら、躊躇していた。

 すると、レオンが苦笑しながらチェーンを指にかけ、輝くエメラルドをサヤの目の前で揺らした。


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