王太子の揺るぎなき独占愛
正式に婚約が調ったとはいえ、気持ちがそれに追いつかずサヤは家を飛び出し温室に逃げ込んだのだが、レオンはどうしてそれを知っているのだろう。
それに、タイミングよくレオンが温室にやってきたのもおかしい。
サヤは眉を寄せ、おずおずと口を開いた。
「殿下は、私が結婚を嫌がっているとお思いなのですか?」
「そうなんだろう? だから今日も温室に逃げ出したんじゃないのか?」
はっきりと言い切られてしまうと、サヤは反論できない。
レオンが誤解しても仕方がないとはいえ、決して結婚を嫌がっているわけではないのだ。
サヤは焦るが、ただでさえレオンとここまで近い距離で話したことはなく、どう言葉にすればいいのか、わからない。
レオンは眉をひそめ、口元を引き締めた。
その様子に、サヤは慌てた。
「ち、違います。決して殿下との結婚を嫌がっているわけではありません。ただ……」
「ただ?」
「ただ……まさか私がレオン殿下と結婚だなんて……思ってもみませんでしたし。私は王家の森で過ごすばかりで他にはなにもできません。それに……」
サヤはそこでいったん口を閉ざした。
うつむき、唇をかみしめる。
困らせるに違いないレオンへの恋心を口に出すわけにはいかないし、愛されることのない結婚はしたくないと、言うわけにはいかないのだ。
王命による結婚に、拒否権はないのだから。
それになにより、王妃として召し上げられる可能性があるルブラン家の娘に生まれたにも関わらず、サヤは王妃教育を受けてこなかった。
まさかサヤが選ばれるとは、レオンの年齢やサヤが分家に生まれたということを考えても誰も思わなかったのだから、当然といえば当然なのだが。
「サヤ?」
次の言葉を促すように、レオンがサヤの顔を覗き込んだ。
サヤは言葉を選びながらゆっくりと話し始めた。
「あの、私は王妃としての器ではないと思います。森のことにばかり夢中で、国の歴史についてもよく知りませんし、礼儀作法にも自信がありません……。私には、王妃としての務めをしっかり果たせる自信がないのです」