王太子の揺るぎなき独占愛


「国王にふさわしい器になるようしっかりと教育していこうと、ただそれだけを考えていたと思う」

 レオンはそこでくすりと笑った。

「俺の意志なんてどこにも反映されず、ひたすら帝王学を学ばされ、ただただファウル王国の未来を、そして国民を守れる力をつけるために、育てられた」
「あ……お疲れ様です」
「なんだよ、それ」

 サヤのつぶやきに、レオンが再び笑う。
 そして、サヤの肩を抱きよせると自分の頭をサヤの頭に乗せた。

「王妃としての器なんて、これから勉強して慣れていけばいいんだ。俺がこれまで学んできた時間と同じくらい……いや、それ以上の時間をともに過ごすつもりだ。焦らなくても、気づけば城を采配する逞しい王妃になってるさ」
 
 そう言われてサヤが視線を向けると、レオンが彼女を安心させるような笑顔を浮かべていた。
 
「もちろん、かなりの努力が必要だし、一朝一夕に王家に溶け込むことはできないだろうが。俺も、ジークも。それに城で働いている者たちはみなサヤが立派な王妃になる後押しをする。だから、俺から逃げないでくれ」
 
 最後の言葉は、とても力強く、切実なものに聞こえた。

 それに気づいた瞬間、サヤの心は凪ぎ、ざわめいていた胸が、すっと落ち着いていった。

 ふうっと一度息を吐き出したサヤの心の変化を感じたのか、レオンはさらに強い思いを口にした。

「俺だって、優秀な王太子だと言われてきたが、今はまだ王にふさわしい器じゃない。だけど、王位に就く覚悟を決めたと同時に、それとともに背負う責任と義務は果たすことも決めた。そうすれば、いつか王の器とやらにたどり着くと信じてる」
「レオン殿下……」



< 72 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop