王太子の揺るぎなき独占愛
「で、今日の要件はなんだ? お前に引き継いだ公務で困ったことでもあったか?」
ラルフはシオンと顔を見合わせ首をかしげた。
「え、あ、違いますよ。公務は順調です。陛下が力を注いでおられた学校もそろそろ完成のようです。経済的に苦しい子どもたちへの食事の提供も、ロザリーが中心となって実現しそうです」
「そうか。王族費からその食事の費用は用意してくれ。子どもたちに必要なものが他にあれば、これからはサヤと相談して決めてくれ」
「はい。わかっております。サヤは……子どもたちに人気があるので顔を出せば喜ばれるでしょう」
サヤが子どもに抱きつかれることもあると言っていたことを思い出し、レオンは顔をしかめた。
「ん? 体調でも悪いのか? おかしな顔をしているぞ」
「おかしな顔は余計です。体調もいいのでご心配には及びません」
「そうか。ならいいが。で、なんだ? これからシオンと一緒に馬乗りに出かける予定なんだ。天気もいいし、ふたりで遠出するのを楽しみにしてるんだが」
自分の妻に相変わらずメロメロなラルフにうんざりとしながらも、レオンは気持ちを切り替えて口を開いた。
引き締まった表情を浮かべたレオンを見て、なにかが起こったのだと察したラルフとシオンも、笑顔を消した。
「採掘が始まった鉱山のあたりに、不審な奴らが現れていると報告がありました」
暗い光を瞳に宿し、レオンは冷たい声でそう言った。