王太子の揺るぎなき独占愛
『王太子として我慢ばかりの人生なんてつまらないでしょ? 一度くらい王太子としての力で無理矢理ほしいものを手に入れてもいいと思うわよ。その代わり、絶対にサヤを幸せにしなさいよ』
自分の感情に素直すぎるほど素直に生きているジュリアの言葉に背中を押され、レオンは現国王に直談判し、サヤとの結婚を許されたのだ。
自分の気持ちにのみ従い、サヤの感情を無視したやり方に申し訳なさも感じているが、レオンは後悔していない。
婚約した当初は森に逃げ出すほどの動揺を見せたサヤだが、今では覚悟を決めたのか、毎日王城に通い、立派な王妃になれるよう努力を続けている。
森で過ごす時間が取れないらしいが、そんな状況でもこうして笑っているサヤが愛しくてたまらない。
「絶対に、幸せにする」
長く思い続けた相手と結婚できる幸せをかみしめ、レオンはつぶやいた。
初めてレオンがサヤに会ったのは、彼女がまだ五歳の頃だ。
王である父とサヤの父ダスティンが学生時代からの親友ということもあり、それまでもサヤの名前を耳にすることはあったが、当時十一歳のレオンは王太子としての公務が増えてきたころで忙しく、なかなかサヤと会う機会はなかった。
そんなある日、ダスティンに連れられて王城にやってきたサヤは、庭園の緑に映える白い外壁の美しさと城の大きさに圧倒され、言葉を失っていた。
王家の森についての勉強をすでに始めていたサヤは、普段は遠目から眺めていた城を間近に見て、そのあまりの荘厳さに感動し、次第に目をキラキラさせた。
子どもらしいその表情の変化に、レオンは、思わず見とれた。
はっと我に返り、恥ずかしそうに顔を赤くする姿もかわいく、レオンは目が離せなかった。
そんな子供らしい姿を見せた一方で、妹のジュリアとはそれほど変わらない年齢だというのに、ダスティンの後ろにおとなしく控え、国王夫妻を前にしても物怖じすることなくすっと膝をつき、正式な礼をして見せた。
くるぶしまであるドレスの裾を小さな手でつかむ姿はとても愛らしく、国王夫妻も目を細めた。