王太子の揺るぎなき独占愛
ルブラン家の女性が本格的に王家の森の勉強を始める時期になると、国王夫妻に挨拶をするのが慣例となっている。
三歳になるかならない頃から森を駆けまわり、動植物について興味を持っていたサヤは、挨拶に訪れた頃にはもう、森の地理や生息している動植物、薬草の種類など、大人顔負けの記憶力でどんどん知識を増やしていた。
『サヤでございます。王家の森でしっかりと勉強をして、陛下や王妃殿下が元気で楽しく過ごせるお手伝いができるようになろうと思っています』
頭を下げ、子どもらしいかわいい声でそう言ったサヤに、ラルフは目尻を下げた。
『か、かわいい。やっぱり美しいカーラの娘だ。大きくなったら男どもがサヤを嫁にとうるさくなりそうだな。できればレオンの妃に……といっても、年齢的にむずかしいか。だが、絶対に美しくなるぞ』
立場が違うとはいえ、心を許し合う親友ダスティンの娘だ、かわいくないわけがないのだが、城下でもその美しさで名を馳せていたカーラが母親であれば、明らかにその遺伝子を受け継いでいるサヤが美しく育たないわけがない。
当時のラルフは「十年遅く生まれていれば、王妃として召し上げることもできるのだが」とひどく残念がっていた。
その様子に苦笑していたシオンも、カーラとは何度か顔を合わせたことがあり、彼女のさばさばとした性格と、城下からルブラン家という名家に嫁いだ苦労を見せない強さに惹かれていた。
それまで何度か森でサヤに会ったことがあったが、会うたび成長していく彼女を、シオンも大切に思い、ラルフ同様、いずれ王妃にとも考えていた。
しかし、やはり年齢というのは大きな問題だ。
レオンが王位に就くころにはサヤは二十代半ばだろう。
他の男性と結婚していてもおかしくない。
レオンとの縁は期待できないだろうと考えていたが、レオンの強い思いにより、ふたりの結婚が決まったのだ。