王太子の揺るぎなき独占愛
王太子としての人生に疑問も不満もないが、ときには疲れ、羽を伸ばしたくなる。
そんなとき、レオンは王家の森に入り、自分にとって特別なクスノキを見上げて気持ちを切り替えていた。
レオンとともに育ち、彼の成長を見守ってきたクスノキは、どっしりとした風格と温かさを持つレオンの守り神だ。
そんな中、ときおり見かけたサヤの姿。
王家の森を管理する彼女が森にいてもおかしくないのだが、彼女はいつもレオンを見つけると気遣うように背を向け、そっとその場を去っていった。
サヤはクスノキの状態をいつも気にかけていて、必要な肥料を用意したり、枝ぶりを確認しているようだった。
熱心にクスノキの手入れをする姿をしているときにレオンが現れれば、申し訳なさそうに頭を下げ立ち去ってしまう。
気持ちが沈んだときに森を訪れるレオンの心情を察しているようだが、レオンを邪魔しないようにと遠慮するサヤに、次第に物足りなさを感じるようになった。
レオンがそれを望んでいるかのように遠慮がちに背を向けるサヤを引き止めたいと感じた瞬間、レオンはサヤを愛しいと思う自分の気持ちに気づいた。
二度と俺に背を向けるようなことはさせない。
そして、サヤとの結婚をなにがなんでも実現させるため、レオンは覚悟を決めたのだ。