王太子の揺るぎなき独占愛
そうなれば、両国以外の周辺国はいい感情を持たなくても当然だ。
ただでさえ両国は豊かで発展しているのだ。羨まれても仕方がない。
そんな状況を理解していた両国は、鉱山が発見された当初、両国間で秘密裏に今後のことを話し合った。
もともと互いに協力しあい発展を遂げてきた両国は、今回も両国の利益になるよう力を尽くすことを決めた。
それだけでなく、両国以外の周辺国にこの鉱山の存在を知られた場合、無用な戦いが勃発するかもしれないと危惧し、採掘を始めると同時に両国国王の名で書状を送った。
その書状には、周辺国の現状と今後の発展を考えての提案がなされていた。
その大きな柱となっているものは、この鉱山よって得た利益の一部を使って、周辺国の土地の整備を行うというものだ。
水不足に悩む国には山に植樹を行い、川の流れを変えるなどの工事を行って、農業の発展を後押しする。
そして塩害に悩む海岸沿いの土地には石灰を運び、土地の改良を大々的に行う。
これら以外にもいくつかの方策を示し、鉱山の採掘と加工、そして交易ルートに乗せる流れを妨げないよう協力してほしいと、依頼した。
そしてその提案はどの国にも好意的に受け止められた。
そんな経緯を経て、周辺国の協力もあり順調に採掘が始まったというのに、やはり鉱山を狙う悪党はいるものだ。
今のところ大きな被害は出ていないが、採掘場周辺を探る動きを見せる怪しい者たちが何度か確認されているという。
レオンは顔を歪め、両手をぎゅっと握りしめる。
「周辺国すべてを豊かにするための鉱山だ。邪魔はさせない」
即位はまだだが、すでに国王に代わって公務にあたっているレオンは、王太子としてではなく一国のトップとしての自覚が生まれていた。