王太子の揺るぎなき独占愛
「殿下……?」
考えにふけっていたレオンの背後に、優しい声が響いた。
耳触りのいい声にハッと振り返ると、レオンの様子をうかがうサヤの姿があった。
「どうかされましたか? 何度か声をおかけしましたが、お気づきにならないので……」
心配そうに見つめるサヤの姿に、殺伐としていたレオンの心はすっと落ち着いた。
「いや、なんでもない。ちょっと考えごとをしていただけだ」
レオンはベランダから部屋の中に戻ると、戸口に立つサヤに近づいた。
「庭園でのおしゃべりは楽しかったか?」
「え? あ、もしかして、バルコニーからご覧になってましたか?」
「ああ。侍女たちと笑ってるサヤに見とれていたんだ」
「見とれて……って、あの、冗談はやめてください」
サヤは照れて、頬に手を当てた。手の間から見える肌だけでなく、耳や首まで赤くなっている。
レオンはサヤの前に立つと、うつむく顔を覗き込んだ。
「楽しそうに笑っていたのはこの顔か?」