君のことは一ミリたりとも【完】
一度唐沢の存在は忘れて、この子の気持ちに耳を傾けてもいいかもしれない。
「……分かった、じゃあここにいるから話して?」
「いいんですか?」
「だけど無駄に唐沢を上げるような発言はしないで。アイツが調子に乗りそうな話、嫌いなの」
「(仲悪いのかな……)」
しかし彼女はそんな謎の条件にも快く頷き、話の続きをし始めた。
「河田さんの会社が分かったのはあの後会社まで爽太先輩と一緒に追いかけたんです。河田さん一回も振り向かずに帰っちゃったんですけど」
「……」
「……先輩、本当に河田さんのことが好きなんです。もし今回のことでそのことを疑っているようだったら、私のせいだなって思って」
アイツ、自分の後輩に私のことどこまで伝えてあるんだ。どうせ私の悪口だろうけど。
彼女には申し訳ないが呆れてため息しか出なくなってしまう。
「あの……アイツ、ペテン師なので。言うこと為すこと信じない方がいいですよ」
「それはなんとなく察してます。爽太先輩って平気で嘘付きそうですよね」
「(バレてる)」
「けど、人って本当に焦った時って身体は嘘つけないと思うんですよ」
彼女の言葉に俯せていた顔を上げると何やら確かな確信があるのか、今までになく真剣な表情で新田さんは語った。
「一昨日、河田さん先輩に電話しましたよね」