君のことは一ミリたりとも【完】
結局彼の車の助手席に乗せられ、私の家に向かって発車することになった。
「本当に変なことしたら即刻別れるから。警察も呼ぶ」
「罪が大きすぎる……」
手慣れたようにハンドルを回す唐沢を見て意外そうに呟く。
「車なんて持ってたのね」
「中古だけどね。爺ちゃんが持ってたやつ貰ったの。もう運転できないから」
「前から気になってたけど唐沢のお爺さんたちって今何歳なの?」
「んー、80歳くらい?」
「はちじゅ……」
思ったよりいっていて思わず口に出してしまうと彼は「あはは」と可笑しいように笑う。
「でもめっちゃ元気だよ。畑仕事してるしね」
「そう……」
「免許は持ってたんだけど朝起きて車運転するのが怠くてね。車通勤になったのは最近だけど」
それにしては慣れたように運転しているけどな。私も免許は大学生の時に取ったのだが一人暮らしを始めてからは車も持ってないので運転する機会はなく、ほぼペーパードライバーと言っても差し支えない。
どうして急に運転なんかし始めたのか、と尋ねると彼は元からその返事を考えていたようにサラリと返す。
「デートの帰りに河田さんのこと家まで送れたら便利だし、ドライブデートもいいなぁって」
「……つまり下心ってわけ」
「いやいや、純粋な気持ちでしょう」