君のことは一ミリたりとも【完】



唐沢が言うと全てが不純に聞こえる。本当に信用ならない男だと溜息を吐いた後、本当にそんな男を家に招き入れていいのだろうかと不安に感じてきた。

車を走らせること30分、仕事場の最寄駅から自宅の最寄駅間は2駅しかないので短い時間で家に着いた。
マンションの駐車場に車を止めると仕事終わりなのに関わらず、まるで遠足に行くかのように気分良く歩き出す唐沢。


「ここが亜紀さんが暮らすマンションかー。って、玄関前くらいは前にタクシーで来たことがあるけどね。俺の家からも近いの知ってる?」

「その情報全然いらない」


玄関に入り、郵便受けを確認するとエレベーターで私の部屋がある階まで上がる。
すると彼はあることが気がかりのようで辺りをキョロキョロと見渡した。


「このマンション、玄関に警備員がいないんだね。エレベーターにも防犯用のカメラがつけられてないみたいだし、セキュリティとしてどうなの」

「古いから。昔はもっといいところ住んでたけど家賃の問題でやめたのよ。それに自分の身ぐらい自分で守れるから」

「格好いいこと言うねぇ」


会社から近いところを探した時、ここら辺りのマンションしか見つからなかった。少しでも近い方が生瀬さんが家に泊まってくれるから引っ越してきた。
そういえば昔生瀬さんにも同じこと言われたな。セキュリティーが甘いからどうなんだって。生瀬さんが代わりに家を探してくれると言ったけれど、彼の手をそこまで煩わせるのは自分が許せなかった。

それに、そんなことをさせて仕舞えば私は完全に彼の愛人といってもおかしくはなかった。

部屋の前に着き、玄関扉の鍵穴に鍵を差し込むとすかさず後ろを振り返る。


「本当に変なことしたら追い出すからね」

「確かに用心深いね。それならセキュリティーが甘くても安心かな」

「……」



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