君のことは一ミリたりとも【完】
さっきから全然会話が噛み合わないな、玄関の鍵を外すと私は扉を開き、「どうぞ」と彼を招き入れた。
何も可愛げのない部屋。前までは物で溢れていたけど一度大掃除をしたからかかなり整頓されていて殺風景になっていた。
唐沢は「おー」と感嘆の声を上げると、
「思ったより女の子の部屋だ」
「どれだけ酷いのを想像してたのよ」
「いや、亜紀さんの部屋って予測不可能すぎるというか。この猫のカレンダーとか可愛いじゃん」
「触らないで、指紋が付く」
カレンダーをめくろうとしていた手が今のでピュッと引っ込んだ。
何かに触ろうとしたら直ぐに注意をしなければと目を光らせながら私はキッチンの冷蔵庫の中を確認する。
野菜が何個かと蕎麦が一つ、か。
「ねぇ、本当に何もないから焼きそばでいい?」
「いいよ、ていうか帰りにスーパー寄ればよかったね」
「別に他に買いたいものもないからいいわよ」
適当に座っててと促すと私はさっさと夕食の準備を始める。
しかし生瀬さんのことを話したいだけなのに何で唐沢を自宅へ招かねばならないのだ。
「亜紀さん、テレビ見ていーい?」
「……勝手にして」
まるで自宅のようにくつろいでいる唐沢。何で彼ばかり余裕そうなのだろう。
女の子の家になんか行き慣れているから? この家に自分以外の人間を入れたのは母と生瀬さん以来だ。優麻だって来たことがない。