君のことは一ミリたりとも【完】



適当にテレビでバラエティー番組を流しながらテーブルでノートパソコンを触っている唐沢の背中を見つめる。
いつのまにか私の生活の中に彼の姿がある。それを自然に感じるようになったのはいつからだろうか。

そういえば人と付き合うなんていつぶりだろう。生瀬さんを抜くと大学生以来? それに大学の頃も少しの間付き合っただけでそんなに長続きはしなかった気がする。

人と干渉するのが苦手な私はあまりにも人と距離が近いのが駄目で、本当に心の底から好きだと言える人じゃないと長く一緒にいられない。
あの時は向こうから告白されて流れで付き合ったけど、長続きしなかったのは相手の人を好きになれなかったからなんだろう。

だとしたら唐沢はどうなんだろう。恋人らしいスキンシップもなければ甘い言葉も吐かない。
どれだけ私がキツい言葉を言ったとしても友達感覚で流すことができる。

最早これは男女交際に入るのだろうか。


「出来たけど」

「待ってました」


私が声をかければ彼はノートパソコンを閉じてテーブルを開ける。
ノートパソコンの画面からは何やら文章の羅列のようなものが見えた。


「……仕事、忙しいの?」

「んー、まあまあかな。常に締め切りに追われてるような仕事だからな」

「そう、別に忙しい時は誘い断ってもいいよ」

「何で? 亜紀さんから連絡来るとか珍しいし、勿体無いでしょ」


唐沢は、人に嫌われたくないと前に私に言っていた。昔から他人の視線を気にして生きてきて、自分が必要とされるような行動や振る舞いをしてきたと。
だからこの人は人が何を言えば何をすれば喜ぶのかを知っている。他人の気持ちを察する能力に長けているんだ。



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