君のことは一ミリたりとも【完】
二人で焼きそばを食べるなんて、結構長続きしたカップルか熟年夫婦のすることだよなぁ。
美味しいよと褒め言葉を挟みながら食事を進める唐沢の姿が不意に生瀬さんと重なった。
生瀬さんとはレストランのご飯とかしかあんまり食べたこともないな。
それに比べたら食事も貧相だし、服装もメークも人に会うにしては手抜きすぎる。
だけど、
「(いいなぁ、こういうの。普通で)」
普通が一番いい。
焼きそばもサラダも綺麗に食べ終わると、唐沢は「さて」と一言前置きして、
「話したいことがあるんだったね。聞いてもいい?」
「……」
生瀬さんのことを聞いてほしいだけだったのにどうして私は目の前の男を家に上げて料理まで作っているんだろうか。過程が程遠すぎるのでは。
終わったことを悔やんでも仕方がないので私は以前生瀬さんから「気にしてほしい」と思わせぶりなことを言われたこと、そして今回の出張について簡単に話した。
すると最初の方は軽く相槌を打ちながら聞いていた唐沢だったが徐々にその表情は険しくなり、話し終わる頃には納得していない様子で溜息を吐く。
「何それ、亜紀さんに未練たらたらじゃん」
「直接的なことを言われたわけじゃないし、私の勘違いって可能性もあるからそこまで深く受け止めなくてもいい」
「けど、亜紀さんは生瀬の態度がおかしく思えたんでしょ?」
「……」