君のことは一ミリたりとも【完】



新大阪に着いたのは11時頃だった。仕事関係の打ち合わせは午後からだ。


「昼飯済ませるか。時間がないから凝ったやつじゃなくて悪いな」

「大丈夫です、気にしないでください」


二人で駅にあったうどん屋さんに入り、それぞれ好きなメニューを選ぶ。やはり関西うどんだけあって出汁がしっかりしていて、昼御飯だけでも関西を味わった気になれる。
今思えば生瀬さんとうどんなんてレアかもしれない。いつも高級そうなものを食べているイメージがあるから。

天ぷらうどんを選んだ生瀬さんが海老の天ぷらを口に含んでいる姿を見て、なかなか悪くないなと心の中で思った。

午後からは怒涛のスケジュールだった。一つ目の打ち合わせが終わると3時からはまた違う企業もの顔合わせ。
更には夕方まで新しくプロデュースするイベント関係の会場を下見し、それが終わり次第有名企業が集まる企業団体のイベントに出席した。

イベントでは立食形式の食事も出ていたがほぼ生瀬さんの隣について挨拶回りをしていたので満足に食べれなかった。


「(出張で来てるんだから楽しもうとかは一切考えていなかったけど……)」


こんな状況で生瀬さんが私に気があるんじゃないか、なんて疑うことですら馬鹿馬鹿しく思える。
一日中隣で見てきた彼はやはり仕事一筋の男だったし、仕事中にうつつを抜かしたりはしない。

余計の心配だ、これは唐沢に連絡することもない。

イベントも終わり、会場を出たのが9時頃。トボトボとした足取りでホテルへと向かう。


「悪い、電話だ。少し待っててくれるか?」


途中で彼が電話で席を外し、私は道端にあったベンチに腰をかける。
疲れた、特に最後の企業会のイベントはずっと立ちっぱなしだったし。でも終わっても涼しい顔をしている生瀬さんは流石だな。



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