君のことは一ミリたりとも【完】
ビールを喉を流し込む生瀬さんを眺めているとその視線に気付いた彼が「どうした?」と首を傾げる。
「あ、いや……生瀬さんもビール飲むんだなって」
「飲むだろ、普通。俺のことをなんだと思ってるんだ」
「そうですね、イメージの問題でした」
以前はこんなに人がいるところで二人でご飯だとか考えられなかったから、私はビールを口に含みながらそんなことを考えた。
お好み焼きは既に焼きあがったものが目の前の天板に運ばれてくる仕組みだった。ソースと鰹節の香りが広がり、空腹だったお腹を一気に満たしてくれる。
「(美味しい……)」
仕事ではずっと気を張っていたからかお腹に食べ物が入った瞬間に漸く落ち着くことが出来たと思う。
「たこ焼きもあるみたいだぞ」
「大阪といえばですね」
「頼むか?」
「え、いいんですか?」
思わず目を輝かせてしまうと彼がまた吹き出したように笑う。気が抜けたと同時に子供っぽいところを見せてしまっただろうか。
なんかこの出張中、恥ずかしいところばかり見られてある気がする。彼がたこ焼きを注文している間にこれまでの行いを反省した。
彼は店員が戻っていく姿を眺めながら、
「しかし、河田とは長いこと一緒にいるはずでもまだ知らないことが多いな」