君のことは一ミリたりとも【完】
え、と顔を上げると彼は深刻な顔つきで私のことを凝視する。
「たこ焼きぐらいで目を輝かせるとは思わなかった」
「あ、あれは……」
「恥じることじゃないぞ。新鮮に感じただけだ」
「……」
今の言葉を、彼はどういう気持ちで言ったんだろうか。
「(私と同じように、昔を思い返すように……)」
それ以外の気持ちが込められていないことを願う。
「これからも、一社員として頼ってもらえるように頑張りますね」
「……」
社長と社員のラインをあえて引く。すると美味しかったはずのお好み焼きがどれだけ咀嚼しても味がしなくて困った。
これでいい。もうこれ以上はなくていい。この人とのことはなかったする。
過去にそう決めた私のことを、今の自分が守らなくてどうする。
お店を出ることには10時半を回り、辺りに人も少なくなっていた。
ホテルの場所は近かったため、迷うことなく辿り着けた。
明日も朝早いので早くシャワーを浴びてベッドに横になりたい。
「部屋の鍵貰ってくるのでここで待っててください」
「……」