君のことは一ミリたりとも【完】
生瀬さんをホテルのロビーに残し、私だけでフロントへ向かう。
今回のホテルを予約したのは私だし、生瀬さんにゆっくりしてて欲しかったからだ。
フロントのスタッフに名前を告げ、チェックインを済ませると私は手前の台に置かれたホテルのカードキーを見て首を傾げる。
「……あの、キーが一つ少ないんですけど」
「いえ、ツインのお部屋が一部屋と予約いただいておりますが」
「そんなことありません、予約した時しっかりとシングル二部屋で予約したはずです」
スタッフの方は再度確認をしてくれたが、彼女から告げられたのは私の見覚えのないことだった。
「最初は二部屋でのご予約でしたが少し前にツイン一部屋に変更のご連絡を頂いたみたいです」
「……」
「申し訳ございませんが本日は満室でして……」
そんなの、一体誰が……
私はルームキーを一つ受け取るとロビーにいる彼の元へ向かう。
彼は私の暗い表情を見るなり「どうした?」と心配そうに顔を覗き込む。
「何かあったか?」
「……部屋が、一部屋しか取れていなかったみたいです」
「……」
「すみません。今日は満室のようでもう一部屋取れませんでした。私はどこか別のホテルを利用するので生瀬さんはこのままこのホテルに泊まってください」
きっとここが満室ということは周辺のホテルもほぼ満室で直ぐに見つけるのは困難だろう。
しかしその時は24時間営業のネットカフェなどを探せばいいことだ。