君のことは一ミリたりとも【完】
私は彼に向けてカードキーを差し出す。彼の顔がうまく見れないのどうしてだろう。
先程の店での雰囲気とは違って静かな空気が流れ、生瀬さんがカードを受け取るために手を伸ばした。
と、
「っ……」
彼が掴んだのは私の腕だった。
「生瀬さん!」
「……」
彼は強く私の腕を引っ張るとエレベーターホールへと向かう。
どれだけ強い力で振り払おうとしても全く歯が立たない。こちらに背を向ける彼の表情は見えない。
この時間にエレベーターに乗るのは私たち二人だけで、回数が上がっていく様子を眺めながらどう行動に出ようか考えていると隣に立つ生瀬さんがふと言葉を漏らす。
「ツインなんだろう。だったら別々に寝ればいい。俺も気にしないからお前も気にするな」
私はその言葉に顔を上げる。
「どうしてツインだって知ってるんですか?」
「……」
その返事をする前にエレベーターが目的の階に着き、再び彼が私の腕を引っ張った。
部屋の前まで来ると彼が手に持っているカードキーを使ってドアのロックを解除する。
ドアが開かれると目の前の大きなガラス窓に綺麗な夜景が映った。