君のことは一ミリたりとも【完】
部屋の中に入ろうとする彼についていくまいと私は足に力を入れてそこから動こうとはしなかった。
「何故こんなことを?」
「……」
背中に尋ねると生瀬さんは冷たい表情で私のことを見下ろした。
「お前とゆっくりと話がしたいと思っていた」
「それは仕事の話でしょうか」
「……いや」
「だとしたら、私は生瀬さんに話すことはないです」
ハッキリ告げると彼の表情が強張る。そんなはず、そう考えていたことが次第に真実味を帯びてくる。
この人がそんな狡いやり方をするはずがない。そう信じたいのに。
「手を、離してください」
「……」
だけどその信頼はボロボロに崩れていく。
腕を強く引かれ、その拍子に部屋に入ってしまった私は生瀬さんの腕の中に閉じ込められていた。
後ろでドアが閉まり、ロックがかかる音がする。
ゾワっと背筋が凍るのを感じ、慌てて離れようとするが更に強い力で抱き締められた。
「生瀬さ、」
「悪かった」
「……」