君のことは一ミリたりとも【完】
だけど、
「そんなの、唐沢に迷惑掛けるし」
一緒に住むと言われても急すぎて、頭がついていかない。
と、
「迷惑って何?」
「っ……」
「俺が善意でやろうとしていることを亜紀さんは迷惑だって思ってるんだ」
その何処か冷めた声は高校生の頃の彼を思い出させた。
「俺の心配を真面目に受け取ってくれないんだね」
「そ、そういうことじゃなくて」
「そういうことでしょ? 亜紀さんはいつもそう、独りよがりで意地っ張りで。そんなんだから……」
「……」
そんなんだから、生瀬さんに捨てられたんだって?
自分でも一番分かっていることを他人から指摘される時ほど屈辱的なことはない。
私が彼の言葉を聞いて黙っていると唐沢ははぁと吐き捨てるように溜息を吐いた。
「そういうこと言いたいんじゃなくて、甘えてよってこと」
「あんたに甘えるくらいなら舌切ったほうがマシ」
「そういうとこ。可愛げがないよ」