君のことは一ミリたりとも【完】



デスクに戻ると加奈ちゃんな心配そうな表情で俺の元へ駆け寄ってきた。


「あ、あの先輩……大丈夫ですか?」

「ん? 何が?」

「……」


この件に関して彼女を関わらせたくなくて、バレバレの作り笑いで話題を遠ざける。
すると加奈ちゃんは直ぐに察し、「なんでもないです」とへらりと笑うと自分のデスクへと戻っていった。

こうなってしまった以上、最悪の事態も考えなければならない。少しでも猶予を伸ばす為に昨日はああ言ったが舘を頼る必要も出てきた。
しかし一度はそうやって免れたところで向こうが生瀬のスキャンダルを握っていることに変わりはない。いつかは何かしら手を打たなければならない。

それが早いか、遅いかだけの話で。

その後のデスク作業もあまり身が入らず、亜紀さんからの連絡もなかったので残業をこなしていると1時間後に机の上に置いてあったスマホが振動を告げる。


【今日迎え要らないから】


目に入ったメッセージに思わず音を立てて立ち上がると直ぐ側にいた竹村が「どうした」と驚いた表情で、


「あ、いや……別に何も……」


座り直すと慌てて返信を打ち込んだ。


【今どこ? 会社?】

【家】

【亜紀さんち?】


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