君のことは一ミリたりとも【完】




神崎聖は成績も良ければ運動神経もいい、おまけに全国模試では一位を取るほどに頭もいいと全てが揃った男だった。そんな男がモテないわけがなく、高校の時は毎日のように女子から告られていたのだった。
俺はそんな聖の隣にいたからか全く目立つこともなく、平凡な学校生活を過ごしていた。

今日来ている女子の中に聖目当ての女は何人居るんだろうか。


「(まぁ、そんなの関係ないけど……)」


何故なら聖はもう既婚者だからだ。高校の頃から付き合っていた彼女と籍を入れたのは去年のことで、彼女は一人目の子供の出産を間近としている。


「爽太こそ今日は来ないと思ってた」

「何で?」

「好きじゃなさそうだから、何となくだけど」


人からよく分からないと言われる俺だが、やはり高校からの親友にはある程度気持ちがバレてしまっているらしい。
会場に入り名前の確認をしている間にそう言われて思わず吹き出してしまった。

行かなきゃまた後で色々言われるじゃん。それに別に嫌いじゃないよ、高校は結構楽しかったしね。
嫌いな人も、そんなにいなかったはずだけど……


「聖くーん!」

「神崎くんひさしぶりー!」


会場に入るや否やあっという間に囲まれてしまった親友を「あーあー」と哀れみの目で見た。この情景、優麻ちゃんが見たらめちゃくちゃ嫉妬しただろうな。
俺は聖のことを犠牲にしてとりあえず酒を飲もうとテーブルに向かう。結構なお金払ってんだし、食べなきゃ損だわ。

すると、





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