君のことは一ミリたりとも【完】




「あ、すみません」

「……」


ドンッとすれ違いざまに対向者と肩がぶつかった。慌てて謝ったがぶつかった女性はすんとした顔で何事もなかったように歩いて去っていく。

あれ、今のって……


「(……まさか)」


見間違いか? 髪型も雰囲気も全然違う。彼女の背中を目で追いながら俺はスタッフから受け取ったシャンパングラスを口に運んだ。
てっきり優麻ちゃんがいないから来ないものだと思っていた。いやでもまだ本人とは限らないし。


「(胸糞悪いもん見た……)」


出来れば二度と会いたくなかった。


「爽太、久しぶり」

「来れないかもって心配してたけどちゃんと来てんじゃん」

「あ、あぁ、久しぶり。何とか納期に間に合ったから」


久しい友人に声を掛けられてその背中から視線を逸らすと何事もなかったかのように振る舞った。
同窓会にはかなりの人数が参加していた。有名私立学校でお金持ちも通っていたこともあったからか社長だったり上場企業に入社し功績を残してきたような人間がチラホラいた。

途中からこの日のために用意した先生たちからのメッセージ動画の上映会や、イベントなどがメインステージで行われた。その中でもビンゴ大会での一位の商品は「ハワイ旅行」だったから、庶民上がりの俺は周りとのギャップで頭が痛くなった。
1時間ほど盛り上がったのち、まるで追い剥ぎにあったかのような聖と合流した。




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