君のことは一ミリたりとも【完】
なんで、コイツはいつもタイミングが悪いんだ。
「たす、けて……」
《え? 誰ですか?》
「っ……」
あれだけ突き放したくせにこういう時にだけ助けを乞うのは自分のプライドが許さない。
だけどこの時だけは誰かに縋りたかったのだ。
「からさ、わ……」
《……もしかして河田さん?》
「……は、」
電話先で私の様子がおかしいことに気が付くと彼の声色が変わる。
《何、どうしたの?》
「っ……立てなくて、頭、痛い……」
《今どこ? 何かそっから見える?》
「……郵便局、あと大きい交差点があって……東京タワーが見える……」
霞む視界の中見えるものを途切れ途切れに伝える。
すると唐沢の返事は早く、
《分かった、今すぐ行くから待ってて》
その言葉を聞いた瞬間、安心して力が抜けた。