君のことは一ミリたりとも【完】
どうして私は唐沢に弱いところばかり見つけられてしまうのだろう。
高校の時も顔を合わせる度に口喧嘩して、あんなに嫌い合ってきたのに。
なのにアイツはその分私がどんな人間なのか知っている。
そして同窓会で会った時、何も変わっていない唐沢を見て私は羨ましかった。
私も、変わりたくなんかなかった。
周りにあるもの全てが変わらなければいいなんて思っていた。
私、変わっちゃった。情けない。
あれからどれくらいの時間が過ぎただろう。座りっぱなしの私の目の前に一台のタクシーが止まる。
そこから現れた男は私に駆け寄ると着ていたジャケットを脱ぎ、肩に被せた。
「河田さん! 大丈夫?!」
「……唐沢?」
「はぁ、良かった。取り敢えず何処か入ろう。凄い熱だ」
乗って、と私の前に腰を下ろした唐沢は私の身体を背負うとタクシーへと戻った。
初めて感じる彼の肌は温かくて、そして背中は高校で見ていた時よりも大きかった。
「(唐沢も変わっていたんだ……)」
私の知らないところで。
彼の背中で揺られながら目を閉じると、深くまで意識が落ちていった。
ベッドの中で彼は何度も私を愛を囁いた。
それまで経験が少なかった私を初で可愛いと言って身体の隅々まで宝物のように触れた。
「亜紀は可愛いね」彼は息をするようにその言葉をよく口にする。