君のことは一ミリたりとも【完】
「お前、大丈夫か」
「爽太、さっき俺置いて逃げたでしょ。面倒臭くなりそうだったから」
「バレてた?」
いいから飯食えよ、と大勢の女性を相手にしていた友人を労わる。
するとまた目の前をあの彼女が通っていった。こんなに広い会場なのにさっきからちょくちょく視界に入るんだよなぁ。しかも何故か一人だし。
俺はサラダを盛り付けている聖にこっそりと尋ねた。
「優麻ちゃん、河田さんのことなんか言ってた?」
「河田さん?」
彼にこんなことを聞くのは何故かというと、俺がさっきから気になっている彼女は聖の奥さんの親友だったからだ。
親友同士が付き合っていたこともあって比較的に顔を合わせることも多く、こうして久しぶりに再会しても顔が分かるくらいには顔見知りだった。
「優麻が行かないから来ないって言ってたらしいよ」
「そうなの? じゃあ何でいるんだろう」
「……気になるの?」
サラダをフォークで刺し口に運ぶ彼に「まさか」と片方の眉を上げる。
「別に顔も見たくなかったからさ。こういうの嫌いそうなのに優麻ちゃん無しでよく来たなと思って」
「……爽太って河田さんと仲悪かったよね」
「仲が悪いもいうか、いちいち癪に触るんだよね、あの人。俺が苦手なタイプにドストライクって感じで。だけど折角会えたし声かけてみようかな」
「シャンパンふっかけられないようにね」