君のことは一ミリたりとも【完】




彼は気恥ずかしそうに頬を撫でながら、


「刺激が強すぎるので寝ててもらえると助かりマス」

「……?」


どういうことだ?と私は今の自分の格好に目をやる。すると思わずカッとして布団を掻き集めた。
何故か私は服が流されている状態で、上下どちらも下着姿だった。

も、もしかしてこれって……


「アンタが脱がしたわけ?」

「いや、だって服濡れてたからあのままだと悪化するし! まだお風呂に入れてないところを評価して欲しいのだけど」

「はぁ? それ言い訳になってると思ってんの?」


だけどさっきよりは気分が良くなっているというのは事実だ。
肌寒さを感じて再び布団にくるまりながら、先程から感じていた違和感の正体にようやく気が付いた。


「ちょっと待って、もしかしてここって……」

「あー、うん……凄い服濡れてたし辛そうだったから家もどこか分かんないし、取り敢えず何処か入んなきゃって思って」

「……」

「……まぁ、そういうホテルです」


言いにくそうにその衝撃の事実を述べた唐沢に私は怒りが底から湧き出した。
しかし助けられた手前、何も言えないことに拳を握りしめることしか出来ない。

気が混乱して唐沢に連絡してしまった自分に「どうかしている」と思いたい。
なんで私は何度もこの男に弱みを握られなきゃいけないんだろう。



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