君のことは一ミリたりとも【完】
「冗談、そんなことあったら明日雪降るでしょ」
どれだけこの男に嫌われているかは高校の頃から身に染みるほど分かっている。
私が彼に何をしたのかではなく、私のような強気な女が嫌いなのだろう。
それを知っていたから尚更、私はそこを治したくないと思った。
と、
「もし、好きだって言ったらどうする?」
予想外の返事に目を丸くするのは私の番だった。
唐沢はノートパソコンを閉じるとソファーから真剣な表情でこちらを見つめる。
そんな顔をして見られたのは初めてだったので嫌でも戸惑った。
「は? 冗談キツイんだけど」
「冗談だと思う?」
「……」
「……少なくとも、俺は好意を持ってない人にキスはしない」
あの夜のことを思い出して体温が上がるのを何とか防ぐ。
「そ、んな……信じられない。ていうか何で!? どういう成り行きで!?」
「正直俺にも分かんない。あんなに大嫌いだった河田さんを恋愛対象に見るとか、高校の頃の俺じゃ考えられないだろうね」
でも何でかな、と、
「河田さんの泣き顔を見た時、凄く悔しかった」