君のことは一ミリたりとも【完】
「いい意味で予想を裏切られた、泣き顔があんなに綺麗なんて」
「……アンタ私の泣き顔見て不細工って言ったけど」
「あれはぁ、なんか、腹立ってて」
思わず当たっちゃった、と軽く笑った唐沢に「よく好きかもしれない女を罵倒出来るな」と素直に疑問に思った。
しかし彼はまた笑顔を消すと真っ直ぐに私の人を見つめる。
「けど、河田さんの泣き顔好きだけど、あんまり見たくない」
「え?」
「あぁ、違う……」
彼はソファーから腰を上げるとベッドに座っている私の方に近付いてくる。
「俺以外の男に泣かされてる河田さんは見たくない」
私の隣に腰を下ろした唐沢の目線は私よりも少し高かった。
彼は熱っぽい視線で私のことを見ると「河田さん」と、
「やっぱり俺と付き合おうよ」
何も反応しない黙った私に唐沢が顔を近付けてくる。
と、
「却下!」
「……」
あまりの近さにすぐ側にあった枕を彼の顔に押し付ける。