君のことは一ミリたりとも【完】



本当に仲が悪いというわけではない。むしろ俺は積極的に彼女に話し掛けていた方だった。
だけど彼女の親友への依存の仕方だったり、自己中心的な考え方には全く同意が出来なかった。女の嫌なところが集まったような人間。

なのに何でさっきからこんなに気になってんだ。


「そういえば聖、結婚式での写真だけど……て、あれ?」


隣でサラダを食べていた聖が突然いなくなり、周りを見渡すと再び女性陣に捕まってるのが目に見えた。
もう結婚してるって分かってるのにそれでも取り合おうとするなんて馬鹿な女たちだなぁ。


「(もっと勝算がある恋愛すればいいのに)」


どうしても自分の人生に一度も汚点も作りたくない俺は彼女たちの気持ちが理解出来ずにいた。
こういうところが会社の人たちに何を考えているのか分からないと言われてしまうところなのだろう。

確かに多少ひねくれている自覚はあるが、夢に夢見ているミーハーな人よりも現実を見れている自分はその分出来た人間であると自負しているのだった。


「(多分そういう点においては彼女は俺と似ていると思うけど……)」


何となく、何故高校の時に彼女を嫌っていたのか、今なら少し分かる気がする。

同族嫌悪だ。


「このオムレツ美味しいですか?」

「え、まぁ……っ!?」


後ろから黒いワンピースドレスに身を包んだ彼女に声を掛けた。
自然と返事をしてしまった彼女だったが、俺の顔を見た瞬間に動きが強張った。そして次第には顔が般若のように悍ましく変形していく。




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