君のことは一ミリたりとも【完】




これ以上、誰かに弱みを握られるのは嫌なのに……


「生瀬さんの奥さんに関係がバレてたってだけ」


親友の優麻ですら相談出来ないようなことを口にするとふと私の中の重りが軽くなったと思った。
そして私は誰かに聞いて欲しかったのだと今更になって気が付いたのだ。


「だけって、それ結構ヤバいでしょ」

「そうだね、慰謝料とか払わなきゃいけないだろうし」

「すっごい早口、納得いってないんじゃん」

「……」


図星を突かれたようで悔しくて「いってるよ」と返す。


「だから、ちょっと憂鬱なだけ」

「……自分を守ってくれない生瀬には何も思わないわけ?」

「別に、私が勝手に生瀬さんのこと好きだっただけだし」

「河田さんの好きな人のことを絶対に否定出来ないの、好きじゃない」


優麻ちゃんにしてもね、とまるで高校の時のことを思い出すように呟いた唐沢。
唐沢だって、優麻に関してはいつも味方でいたくせに。好きな人を否定出来ないのは一緒なはず。


「(そうだ、唐沢は高校の時優麻のことが好きだったはずなのに何で私なんかを……)」


優麻と私じゃ性格も雰囲気もまるで違うのに。






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