クールな社長の溺甘プロポーズ
「はぁ……、あ」
そういえば、私今夜泊まるところすらないや。
仕方ない、近くのネットカフェでも入ろうかな。疲れた体にあの狭さと硬さはつらいけれど……。
駅前のコインロッカーからキャリーバッグを取り出し、渋々ながらも街へ出ようとした。
その時だった。
「星乃」
東口から出たところで、名前を呼ぶ声が響く。
え……?
この声、は。
振り返れば、そこにいたのはスーツ姿の大倉さんだった。
「大倉、さん……?」
ちょうど電話をかけようとしていたところなのだろうか。スマートフォンを片手に道の端に立つ彼は、驚いた顔の私を見て小さく笑う。
なんで、どうして彼がここに……?
「なんで……」
「メッセージを見て、仕事が終わってから車を走らせてきた」
「く、車で!?4時間はかかるでしょ!?」
仕事を終えて、その足で片道4時間だなんて。信じられない、と目を見開き声をあげてしまう。
「会うって、約束したからな」
約、束……。
なんでそこまでするの。
約束を守れなかったのは、私。
なのに彼だけは諦めずに守ろうとして来てくれた。
明日だって、大倉さんは仕事だろうに。
その誠実さに胸が締め付けられる。