【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
「社長は昨日、大学時代のご友人の方々とお食事されております。その後はご友人が経営するバーへと向かい、昨晩のような状態になりました」
「は、はあ……。お友だちの、バー……ですか」
「はい。そのご友人は以前は男性でしたが今は女性としてご活躍されています。ですので、昨晩社長のシャツに付いていた口紅というのは……ご友人が付けられたのかと……」
「え……?」
以前は男性?でも今は女性?
ということは……。
私は暁斗さんに何も聞かず、勝手に勘違いして不機嫌になっていた、ってこと?
「あのさ美緒、もしかして俺が他の女の子と遊んできた……、って思って怒ってたの?」
「っ……」
もう恥ずかしすぎて穴があったら入りたい。
だから私が口紅がついてる、って言ってプンプンしてた時、暁斗さんがきょとん、としてたんだ。
それも当然だ。
お友だちと、しかも元男性と遊んできたって怒ってるんだもの。
「ふふ、美緒、やきもち焼いちゃったんだ。ホント可愛いね」
そう言ってよしよしと頭を撫でられ、恥ずかしさは頂点に達した。
「と、藤堂さん、私ここで降ります。講演会の打ち合わせ場所、会社と逆方向でしたよね」
「そうですがまだ時間がありますので……」
「い、いいんです。歩きたいのでここで……」
とにかくこの何とも言えない空気に耐えられない。
勘違いも甚だしい。
私のバカ。
「美緒……」
車を会社からはだいぶ離れたところで止めてもらい、私が降りようとすると暁斗さんに声をかけられた。
「暁斗さん、勝手に勘違いして怒ってごめんなさい。今は恥ずかしくて顔が熱いので少し冷ますために歩きます。じゃあ、またあとで……」
「美緒」
「はい……、っ……」
車から降りようとした瞬間、少し強引に顎を掴まれて唇を奪われてしまった。
車から降りて、後ろを振り向くと、優しく笑って私を見送る暁斗さんと視線が交差する。
この人はやっぱりどこまでも優しく、懐の深い人だ。
面倒見がよくて、頼りがいがあって。
そんな暁斗さんに見つめられると落ち着かなくなる。
ドキドキして身体が火照っていくような、そんな感じがする。
私は、きっとこの人が大好きだ。
遠ざかっていく彼を想いながら、私は初めての恋を自覚し始めていた。
