【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
「ま、そんな君につけこんでる悪い奴は俺なんだけどね。一応藤堂くんには借りるって言ってきたし、後で怒られはしないと思うよ。もし言われたら俺のせいって言ってよ」
「いえ、剣崎さんのせいではありません。私が至らないからです」
「ホント、君って真面目だね。まあ、それじゃそんな君に乾杯しよっか。はい、乾杯」
私が受け取った小さなグラスに、ご自分のグラスを合わせカチンと音を鳴らす剣崎さんは、悪い人なのかそうでないのか、この人のこともよくわからないと思う。
剣崎さんも大きな会社の常務だという話だし、やっぱり優れた人は自分を隠すのが上手だと思う。
それに引きかえ私は話しちゃいけないと言われた人とこうして乾杯なんてしちゃったり、押しの弱い自分が本当に情けない。
「あれ……。これ、アルコール入ってます?」
「え?いや、ノンアルコールのカクテルを持ってきたはずだけど……。ちょっと貸して?」
そう言って剣崎さんはグラスを持った私の手を握り、そのまま口元へ運んで一口飲んでしまった。
これって、間接キス?
そんな思いが頭を巡るけど、社会人の今、それについて咎めるのは幼稚なことなのかもしれない。
これぐらい普通にあることだとしたら、あえて言う方がおかしいことになる。
そう思うと何も言えず、ただ目の前の剣崎さんを茫然と眺めていた。