ぎゅっと、隣で…… 
「どうしたんだよ?」


「南朋ちゃんが……」

 和希の一言に、優一はがばっと起き上がった。



「南朋ちゃんがどうした?」


「俺、兄ちゃんの事心配で、南朋ちゃんに秀二を殴った事、言っちまったんだよ。そしたら、南朋ちゃん、私が居なくなるからって…… 南朋ちゃん、兄ちゃんが結婚すると思っているんだ!」


「何でそうなるんだ?」


 優一は怪訝な顔で和希を見た。



「兄ちゃん、南朋ちゃん居なくなってもいいのかよ?」



 優一は、ぐっと息を呑みこんだ。



「俺には何もしてやれんよ……」

 優一は下を向いた。



 いきなり、和希が優一の枕を手に持つと投げつけてきた。


「そんなに、あの女が大事なのかよ! そんなに、偉くなりたいのかよ!」



「そうじゃねぇよ! 俺は…… 子供の時から南朋を守ってやれなかった…… ずっと、助けてやれなかった…… 大人になったって同じなんだよ……」



「そうじぁないんだよ……」

 和希の力が抜けていった。



「どういう事だ?」


「南朋ちゃん、ずっと兄ちゃんが助けてくれたって言ってた…… 
 でも、もう迷惑かけられないって…… 南朋ちゃん、兄ちゃんが学校卒業して離れて行くから、一人でも頑張ろうって必至だったんじゃないのかよ? ずっと、ずっと…… 
 今だって、兄ちゃんが結婚すると思って、必至で耐えているんだよ。これで守ってやんなきゃ、取り返しのつかない事になるからな! 後で後悔したって知らんぞ!」


「南朋……」

 優一が小さく呟いた。



 すると、部屋のドアがゆっくりと開いた。

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