ぎゅっと、隣で…… 
「優一おるかな?」

 婆ちゃんが、優一の部屋に入って来た。


「どうした婆ちゃん?」


「優一、さっき小百合さんが南朋ちゃんの所に来たみたいだけど、何の用事だったのか知っとるかぁ? 南朋ちゃんの婆ちゃん、えらく心配しっとたけどなぁ……」

 婆ちゃんはチラっと優一を見た。



「兄ちゃん、マズイよ!」


 和希の言葉に、優一は部屋を飛び出そうとした。


「待たんかい! 優一何処へ行く?」

 婆ちゃんの鋭い声が響いた。



「南朋ちゃんのとこだよ!」


「落ち着け優一…… まずは小百合さんの所へ行って話を付けて来い。そうじゃないと、南朋ちゃんを余計に傷つける事になるんじゃないのか?」


「そうだよ、兄ちゃん…… 今、兄ちゃんが行っても南朋ちゃん会わないよ……」


「でも、南朋の所に行かなきゃ……」


「大丈夫、翔に頼んでおくから…… 兄ちゃん、南朋ちゃんに堂々と会えるように、蹴りつけて来いよ!」

 和希の言葉に、優一の頭は冷静になる事が出来たようだ。



「すまん、和希…… 婆ちゃんありがとう……」


「いいから、早く行けよ」

 和希が、優一の背中を押した。


 優一の走る背中に向かって和希が言った。


「翔が、兄ちゃんがボーナスで買ったダウンジャケット欲しがってたぞ!」


「ああ! 分かった!」



 優一は、玄関のドアをバタンと激しく閉めて飛び出した。
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