ぎゅっと、隣で…… 
「そ、そんな事ぐらい、私だって分かっているわよ。あなたが仕事に真剣で、皆からの信頼される男だって…… 私の力が無くたって、きっとトップに立てるわ……」


「小百合……」



「だから…… だから、あなたに振り向いて欲しくて…… 誰にも、あなたを取られたく無くて…… 叔父様の力を借りるしかなかったんしゃない……」


 プライドの高い小百合が、ここまで自分をさらけ出すなど、よっぽど追い詰められていたのかもしれない……


「小百合…… ごめん…… でも、俺にはお前を幸せに出来ないんだよ……」



「幸せ?」


 小百合の力が抜けて、優一の胸から手が離れていく……



「会社は今の仕事のケリが着いたら辞めるつもりだ……」


「そんな…… 優一、そんな事をしたら絶対後悔するわよ…… 考え直して……」


 小百合の目から涙が毀れ落ちた。





「後悔はしないよ…… 絶対」


 優一は、深く真剣な眼差しを遠くへ向けた。




「優一……」



「それと、南朋に何を言ったんだ?」


 優一は、固い表情を小百合に向けた。
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