ぎゅっと、隣で…… 
南朋は自分の部屋に入ると、ベッドの上にうつ伏せに倒れた。


もう、優一の見えない所に消えよう…… 

もう、何もかもが嫌だ…… 

*****


 南朋にはもう泣く力も残っていない。



南朋は、人は最悪の状況の中にいるのだが……



「ねえちゃん、CD貸して?」


 翔が無神経にもズカズカと、スマホのイヤホンを付けて入ってきた。


「どうぞ…… 用事が住んだら早く出てって!」



「はい、はい」

 翔は返事をして座り込んだ。



 翔は座り込んで、なかなか出て行かない……


「まだ? 早くしてよ!」


 南朋は、一人になりたくて苛立ってきた。



「もうちょっと見せてよ」



 翔の言葉に、南朋はそっぽを向いた。



「なぁ姉ちゃん…… 何か嫌な事があると、いつもそうやって部屋の中で、世界で一番不幸な顔していじけるよな」



「何よ! 翔には分からないわよ……」


「姉ちゃん、ちゃんと自分の気持ちぶつけたのかよ? また、何もしないで逃げたんじゃないのか」


「……」

 翔の言葉に何も返せない。



 何もしなくたって、私は誰かの迷惑になってしまう……


 でも、自分の気持なんて誰かにぶつけた事などない……


 自分の気持なんて、誰にも届かないと思っていたのだから……



 翔は、しばらく南朋の部屋でゴソゴソしていたが、スマホで何かを確認すると、何も言わず部屋を出て行った。
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