ぎゅっと、隣で…… 
仕方なく玄関を出て、駐車場へ向かって歩いていた南朋は、足が止まってしまった。


 南朋の車の前に立つ、優一の姿が目に入ったからだ。 


 優一の姿に胸が苦しくなり目を背けた。


「翔、早く車開けて!」

 南朋が声を上げるが、翔は一向に車のカギを開けない。



「連れて来たぞ! 大変だったんだからな!」

 翔が眉間に皺を寄せて優一を見た。



「翔! どういう事よ!」

 南朋は翔をキッと睨んだ。


「悪かったな……」と、

 優一は手にしていたダウンを、翔に渡した。



「本当にいいのか?」


 翔は嬉しそうに、ダウンに手を伸ばした。


「ああ…… 高かったんだからな」



 優一は、一瞬顏を顰めた後、真剣な表情で南朋の方を見た。



「ちょっといいか?」


 真剣顏と違って、声は優しかった。
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