ぎゅっと、隣で…… 
優一は南朋の腕を引っ張り、そのまま車の助手席に押し込んだ。

優一は何も言わず、運転席に座り、車を走らせた。



「ちょと、なんとか言ってよ! これじゃ拉致よ! 誘拐よ!」


「…………」

優一は黙ったままだ。


「ごめんなさい…… 分かっているから…… もう迷惑かけないから……」

 南朋は泣き出した。




 優一は、南朋が迷惑かけたと泣く姿が切ない。


 南朋の事が迷惑だなんて思った事は一度も無い。

 どちらかと言えば、迷惑掛けて欲しい。




 車は山道を抜けると、少し広い駐車場に出た。

 優一は車を降りると、助手席の南朋の手を掴み車から降ろした。


 南朋はまだ泣いている……



「山に捨てなくてもいいじゃん…… ちゃんと居なくなるから……」

 南朋は泣きじゃくりながら言った。



「全く、何を言っているんだか? 行くよ?」


 優一は、南朋の頭を手の平で優しく叩くと、手を取って歩き出した。
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