キミに拾われ、恋して、知って。〜鬼生徒会長と同居はじめます〜
『グスッ……なんで、鈴は習い事ばっかりしなくちゃダメなの?』
泣きじゃくる私の背中をトントンとあやすように叩くお母さんに、そんな質問をしたことがある。
『お友達はみんなおうちで一緒に遊んだりしてるのに、鈴はいっつも断らなきゃいけない。お父さんは“鈴は西園寺家の一人娘なんだから当たり前”って言うの。でも、鈴にはよく分からない……』
お母さんの胸にギュッとしがみつく私の頭を、お母さんは優しく撫でてくれた。
『鈴は、習い事が嫌い?ピアノとか、とっても上手じゃない』
『楽しい時もあるけど……。お友達と全然遊べないのは嫌だよ』
『そうだね。それは嫌だよね。
鈴。お母さんはね。鈴が心から楽しいって思えることをしたらいいと思うんだ』
『楽しい……?』
『うん。楽しいって思う気持ちは、誰に何を言われても誤魔化すことはできないんだよ。だったらそれが、鈴が幸せになるための道しるべになると思わない?』
『道しるべ……』
お母さんは、涙でグチャグチャの私の顔をハンカチで拭って、また私を抱きしめた。
『誰かの言葉に惑わされず、鈴が心から楽しくて、笑顔になれる場所を選んでね。そういう場所は、例え何かを犠牲にしなければならなくても、後悔をすることは絶対にないから』