キミに拾われ、恋して、知って。〜鬼生徒会長と同居はじめます〜

その頃は幼過ぎて、お母さんが何を言わんとしているのかいまいち分かってなかった。



『鈴は鈴らしく、だよ!鈴が幸せだと、お母さんもとっても幸せなの!』



だけど、お母さんが“西園寺家の一人娘”の幸せなんかじゃなく、“私自身”の幸せを願ってくれてるということが凄く嬉しかった。


習い事も、楽しいと思えることがある限りは続けてみようって、その後も頑張れたんだ。




だけど、お母さんは亡くなってしまった。



西園寺家当主の妻として、お父さんと挨拶回りに行っていた時のこと。


お母さんは最後まで笑顔でその務めを果たして、最後は周りの目をはばかるようにお手洗いの中で倒れていたらしい。


きっと、お父さんに恥をかかせたくなかったからだ。



お母さんは私の幸せを願ってくれたけど、お母さんは?


お母さんは、幸せだった?


最後の最後まで西園寺家の妻として生きて。


具合が悪くても、お父さんに言い出すことすらできなくて。


それで、幸せだった?



お父さんが、ああいう人間じゃなければ、きっとお母さんの様子にだってもっと早くに気付いたはずなんだ。


そうすれば、もしかしたら今もお母さんは……。


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