キミに拾われ、恋して、知って。〜鬼生徒会長と同居はじめます〜
お囃子のBGMも相まって、なんだかみんなニコニコ楽しそうに見える。
会長は、今頃どうしてるかな?
誰かとお祭り楽しんでるかな?
頭の中に、会長が女の人と楽しく笑ってる姿が浮かんできて、キュッと唇を噛む。
想像しただけで胸が苦しいのは、きっと浴衣の帯がきついせいだよね?
「あ!あそこのお好み焼き屋よくない!?」
池崎さんが繁盛してそうな屋台を指さす。
ひ〜!
確かに美味しそうなお好み焼きだけど、凄い並んでるよ〜!
苦笑いを浮かべていたら、「あれ?」と言って目を眇める池崎さん。
何か興味深いものを見つけたようだ。
「なに?」
私も彼女と同じ方向に目を凝らす。
────え?
「あれ、五十嵐様に似てない?」
「……っ」
確かに、似てる。
ううん。
あれは、まさしく本人だ。
沢山の人が目の前を行き交う中、なぜか彼の姿だけがくっきりと浮かび上がってくる。
数メートル先にいる会長は、さっき家で見た時と一緒の姿で、変装しているのに嫌味なくらいかっこよくて。目立っていて。
その隣にいる浴衣姿の彼女に、私には見せたことのないような柔らかい笑みで微笑みかけていた。
あれ?
何だろ?何なんだろ?
このモヤッとして真っ黒な、嫌な気持ちは……。