キミに拾われ、恋して、知って。〜鬼生徒会長と同居はじめます〜
「さ、西園寺さん!?」
ギョッと目を剥く池崎さんの様子ではっと我に返った私。
違和感を感じて、慌てて自分の頬に触れる。
……嘘でしょ?
私、何泣いてんの。
「西園寺さん!?どうしたの!?どっか痛いの!?」
ボロボロと涙を零す私に、慌てた様子の池崎さん。
その姿の向こうで、ふと会長がこちらに気がついた気がして、私は慌てて背を向けた。
「ご、ごめん。何か体調悪いみたい。私、帰るね」
「え!?西園寺さん!?」
池崎さんの声に振り返る余裕なんてなかった。
ただただ、頭の中はグチャグチャで。
息が切れて喉が焼けるように熱くても。
下駄の鼻緒で足に血が滲んでも。
ひたすら。
ただひたすら、走った。
この得体の知れない真っ黒な気持ちから、逃げるように────。
家に着いた時には、池崎さんのお母さんがせっかく綺麗に着付けてくれた浴衣はボロボロに着崩れていた。
乱暴に帯を解き、浴衣を脱ぎ捨て、キャミソールと短パンの姿のまま自分のベッドに倒れ込む。
もう、汗なんだか涙なんだか分からないものでぐちゃぐちゃになった顔を枕に押しつける。
……あんなの見たくなかった。